イケメン御曹司の甘い魔法

「優斗さん、両親のことでいろいろ申し訳ございませんでした。」

会社から遅い時間に帰って来た優斗さんを待って御礼を伝えた。

「芽衣、起きて待っていてくれたの?ありがとう。それに、ご両親にお礼を言いたいのは俺の方だよ。」

優斗さんは、微笑みながら私の頭を優しく撫でてくれた。
私はいまだに、優斗さんの笑顔に慣れない…
心臓が煩く鳴りだし、顔が熱くなる。

「優斗さん、社長に私の両親のことは伝えてあったのですか?」

「実は俺も驚いたよ---------------」

優斗さんの話では、私の両親が来るので、正式に私の両親に挨拶するという事だけは、社長に伝えていた。
しかし、日程などの細かいことは何も伝えていなかったそうだ。
恐らく、車の手配や準備を頼んだ社員達に聞いて知ったのだろう。
情報収集の能力は流石だ。
何も知らない振りをしながら、的確に仕事をするのが社長のやり方だ。
やはりこれだけ大きな会社の社長なのだと感じる一面だ。

「芽衣、君のお母さんは芽衣にそっくりで、優しそうだったね…俺も母さんを思い出したよ…」
「優斗さん、お母様は…」
「うん。芽衣にちゃんと話したことは無かったね。母さんは俺が小学校の頃に家を出ているんだ。俺を置いて出て行った母親を以前は許せなかった。でも大人になって会う機会があってね… 話をしてみたら、俺を連れて家を出ると、俺に充分な教育を受けさせられないのが理由で、父親に預けたことが分かったんだ。俺を愛していたからこそ置いて行ったと言われてね…」

優斗さんからお母様の話を聞くのは初めてだ。
確かに、大人になって考えれば理由は理解できる。
でも、小学生の優斗さんはきっと寂しい思いをしたに違いない。

「優斗さん、私も機会があれば、優斗さんのお母様にお会いしてみたいです。」
「そうだな…芽衣にも会わせたいな。今は海外に住んでいるけど、日本にも良く帰ってくるからその時に会わせたいな。」

(…優斗さんのお母様はきっと素敵な女性なんだろうな…)


< 68 / 111 >

この作品をシェア

pagetop