【書籍化&コミカライズ】身代わり聖女の初夜権~国外追放されたわたし、なぜかもふもふの聖獣様に溺愛されています~

3.女神は少女達を翻弄する



 あくる日の午後、モーリーンが帰宅した。
 花のような明るい笑顔で帰ってくるかと思いきや、様子がおかしい。
 モーリーンは人目を忍ぶように裏口に馬車をつけ、姉妹で使っている二階の部屋に戻ると閉じこもってしまった。

「モーリーン……、どうしたの? 何かあったの?」

 母さんが扉の前でおろおろしている。
 わたしは何かありそうな予感がして、いつ用事を言いつけられてもいいように階段の下で待機していた。

 しばらくすると、モーリーンが顔を出し、母さんを部屋に招き入れた。
 それからまた少し時間が経ち、今度は母さんが出てきて、わたしに言った。

「マリアーナ、父さんを呼んできてちょうだい」
「……はい」

 店にいた父さんを呼び、父さんが娘の部屋に入っていくと、ふたたび階段で様子をうかがう。

 一体どうしたのだろう……。
 得体の知れない不安がこみあげて、前掛けの布地をぎゅっと握りしめる。
 何が起こったのか。家族は何を話しているのか。
 わたしはそれを教えてもらえるのだろうか。

 時間の過ぎるのが酷く遅く感じて、いつの間にか前掛けは皺だらけになってしまっていた。





 * * * * *





< 14 / 294 >

この作品をシェア

pagetop