【書籍化&コミカライズ】身代わり聖女の初夜権~国外追放されたわたし、なぜかもふもふの聖獣様に溺愛されています~
 代替わり……、譲位。
 国王陛下はそんなことはまったく匂わせていなかった。
 もしかして王太子様は政変を起こすと言っているのかしら。そんな大変なことを、わたしが聞いてしまっていいの?

「しかし、父上にはご納得いただけなかった。だから、私はあなたにお願いに来たのだ。マリアーナ嬢、私の聖女になってほしい。父ではなく私とともに、国を支えてもらえないだろうか」

 王太子様がわたしの手を取ろうと動いた、その時。
 背後から太い声がした。

「そこまでだ、エウスタシオ」

 内扉を開けて、くつろいだ室内着に着替えた国王陛下が入ってくる。

「父上」
「陛下……!」

 陛下は皮肉っぽく笑った。

「聖女殿の説得には時間が足りなかったようだな。それとも、聖女殿の気持ちは若い男に傾いたのか?」



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