【書籍化&コミカライズ】身代わり聖女の初夜権~国外追放されたわたし、なぜかもふもふの聖獣様に溺愛されています~
 余裕のある微笑みが大人っぽくて、わたしの横に立つモーリーンもぼうっと見とれているのがわかった。

「聖女殿、お迎えに参りました。王都の大神殿まで、私がお送りしましょう」

 腰に響くような低く艶のある声だった。

「……失敗した」

 モーリーンが口の中でぼそりとつぶやき、悔しげに小さく舌を打った。





 * * * * *





 現実とは思えない。
 ずっと夢の中にいるような気分だった。

 わたしは国王陛下と同じ馬車に乗り、王都へと向かった。王都までは立派な馬車でも数日はかかるらしい。
 途中まで付き添ってきた東方神殿の神殿長や神官達は、わたしをとても丁寧に扱ってくれた。
 貴族のようなドレスが用意されていて、女性の神官が着替えさせてくれる。新しい服だけでなく、食べたことのない豪華な食事に、立派な宿屋。
 陛下もずっと優しくて、体調を気遣う声をかけてくれる。

「王都にはあと二日ほどで到着するだろう。聖女殿、疲れてはいないか?」

 まるで宮殿みたいな大きな建物が、今夜の宿泊先だ。背の高い門扉を通り抜けて、さらに玄関まで馬車で走る。
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