【書籍化&コミカライズ】身代わり聖女の初夜権~国外追放されたわたし、なぜかもふもふの聖獣様に溺愛されています~
 明るい屋外から薄暗い店内に入ってきて暗さに慣れない客が、目をすがめてこちらを振り返った。

「……わぁ」

 凄い美形だ!
 背が高くしっかりと筋肉がついているのに、身軽に見える。
 明るく輝く銀色の長い髪に、蜂蜜みたいな黄金色の瞳。彫りの深い顔はこの辺では見たことがないほど整っていた。

 これは『当たり』かもしれない!





 聖女になって。
 最高の当たりを引いたと思ったら、とんだハズレくじだった。
 聖女にはせっかく女神の加護があるのに、それを国王陛下に譲って、また普通の女に戻らなければいけない。そのうえ、加護を譲る手段が初夜だなんてふざけてる。

 だけど、ハズレだと思ったら、やっぱり本当は当たりだった。
 国王陛下、渋くてかっこいいんだもの。しかも、国で一番偉くってお金持ち。最高じゃない?
 マリアーナなんかにはもったいない。
 あーあ。ほんと、入れ替わるんじゃなかったわ。
 次こそは当たりをつかまなければ!

「よし」と気合いを入れて、美形の男に声をかけようとしたら、店内に置いてある見本の布地や中古の衣類を眺めていた男が話しかけてきた。

「女物の服が欲しい」

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