【書籍化&コミカライズ】身代わり聖女の初夜権~国外追放されたわたし、なぜかもふもふの聖獣様に溺愛されています~
 今、願いは叶った。
 わたしはもう聖女ではないし。
 あんなに逢いたかったヴォルフはここにいる。

 それなら何をくよくよすることがあるだろう?

「ヴォルフ、これからもわたしと一緒にいてくれる……?」
「クゥン」

 うん、決めた。
 わたしはもう、一回死んだも同然。
 この森を出ても、故郷にも実家にも戻らない。
 ここからは普通の女の子として、新しい人生を歩いていくのだ。

「ヴォルフ……ずっとよ? 一生だよ? それでもいい?」
「キュ――ン!」

 ヴォルフが厚い舌で激しくわたしを舐めるものだから、また押し倒されてしまった。

 ヴォルフとなら不自由な旅もきっと楽しい。

「安住の地を探しながら、一緒に世界を冒険しましょう。ね、ヴォルフ」

 わたしは初めて、自分で自分の進む道を決めた。
 深淵の森のおどろおどろしい空気さえ爽快に感じた。生きる力が体にみなぎってくる。
 わたしは自分の足で、新しい人生の最初の一歩を踏み出したのだ。



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