今宵も甘く咲く ~愛蜜の贄人形~
無遠慮で取っつきにくい人なのかと思ったけれど、馴れたらもう少しフランクに話せそう。何より叶のとても近しいひとなのだから、あたしにとっても特別。だなんて、ちょっとおこがましいかな。
 
「じゃあまた来るわ」

やっぱり別れ際も素っ気ない。でもそんなに他人行儀でもない風で。あたしより3つ上らしい時雨は男っぽくて、叶とはかなり色が違う。二人は気が合うのかな、と不思議な感じがした。
 





「ご機嫌だね、スズ」

リビングのソファで、覆い被さったあたしに悪戯しながら叶はクスリと笑う。

「・・・時雨を紹介されて嬉しかった?」

耳たぶを甘噛みされ、妖しく囁かれた。

「時雨にもこんなことされたい?」

脈絡があるような無いような問いかけ。
 
「かなえ、だけ・・・」

「可愛いね君は・・・」

指が躰中を這い回って、どんどん理性を追い詰める。

「時雨に見せてあげたいな」

「や、・・・だめ」

「僕の好きにされてるスズを見たら、あの子もきっと我慢出来なくて・・・欲しくなるかも知れないね。・・・おいで」

蕩けながら、言われるままに叶と向かい合う恰好で彼と繋がった。いつも思う。叶のは何の負荷も無く受け容れられる。キスもどれも全部いい。

呼吸が整わずに、まだ起き上がれないあたしの頬に触れながら叶は微笑む。

「君を欲しくならない男なんて、きっといないよ」




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