今宵も甘く咲く　～愛蜜の贄人形～
『仕事』前にお風呂。･･･気分転換の一種なのかと言われるままに。

「二人してどこ行ったのかと思ったら随分とお愉しみだな？そろそろ客が来るってのに」

バスルームの入り口に時雨が仁王立ちしているのも構わず、檜の浴槽の中で叶はあたしの理性を溶かし尽くしていた。見られてる。でも止まらない。･･･止められない。
　　
「時雨が待ってるから、続きは後にしようか」

「や、ぁ･･･」

昂ぶりの最中でお預けを喰らい、あたしは思わず叶にしがみつく。

「いい子にしたらもっとご褒美あげるよ」

妖しく笑んだ叶はでも、これ以上の我が儘を言わせない。熱の引いた眸が冷静さを窺わせていた。

「スズ、ほら来い」

時雨にも促されてお湯から上がる。大きなバスタオルですっぽり包まれ、まるで子供がされるように躰を拭かれていた。

「自分で拭けるってば」

「いいから」

それからドライヤーで髪まで乾かしてくれて。途中、叶が差し入れてくれたオレンジジュースを飲んだ辺りで急に瞼が重たくなって。誰かに抱き上げられた感覚は憶えている。･･･それから？どうしたんだっけ。

ぼんやり意識が戻ってきた耳に叶の声がたわんで聴こえた。

「･･･ああ、それは当店秘蔵の人形なんです。僕らの気に入りなので非売品ですが」
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