悪役令嬢の復讐マリアージュ
ビリビリ1
数日後。
楓くんは人事労務課での役目を終えて、財務課へ異動した。

「あれ?
今日は旦那、もう帰ったんだ?」
残業中、見回りに来た大貴に尋ねられる。

「それはわかんないけど、今日から財務課なの」

「また異動っ!?
詰め込むな〜、いやマジで尊敬する。
ほんと、いい旦那もらったな……
大事にしろよ〜」
と、言いながら去って行く大貴。

ええっ、もう行っちゃうのっ?
せっかく久しぶりに話せるのに……
少し寂しく感じる。

そう、ここ1か月。
特にこの2週間余りは、楓くんも遅くまで残業してたから、ほとんど話せなかったのだ。
しかも、トイレに付き添ってもらった際に話した時も、どこかよそよそしかったし。
なんとなくだけど、元気がない気がして……
何かあったんじゃないかと心配になる。


さっそく次の日。

「待って大貴!」
前日と同様に、さっさと戻って行くその人を引き止めた。

「その……」

「あぁ、トイレか?」

「今日は大丈ぶぃ、じゃなくて!
その、何かあったの?
なんか最近、元気がない気がするから……」

瞬間、目を大きくして。
それを逸らしながら、聞こえない声で呟く大貴。
「ほとんど接してなかったのに、なんで気付くんだよ……」

「えっ、何て?」
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