ときめきの香りは貴方ですか?
【動き始めるそれぞれの気持ち】
入社して、あと少しで半年が経つ。
忙しい毎日で、あっという間だった。

始めは従業員の人が総務部に来る度に
「永富さんか久木さんのところに行ってください」
と心の中で願っていた。

それでも、2人が席に居ない時、質問されると答えられずにおろおろしてると
「後で来るから、聞いといて」
と笑いながら戻っていった。

それでも教育係の久木さんは、とても丁寧に教えてくれる。
「誰だって最初は不安だし、出来ないのよ。私もそうだったがら大丈夫」
おろおろしたり、出来なかったことに落ち込んでると、優しく声をかけてくれた。

マニュアルもとても分かりやすく、今では月次業務は殆ど1人でこなせるようになったし、専門用語などもようやく耳に入ってくるようになった。

「風谷さん、大分慣れてきたね。早く覚えてくれるから助かるよ」
永富さんはいつも優しく声を掛けてくれる。

永富さんは総務部長だけど、引っ切り無しに他部署の従業員だけでなく、役員が相談に来たり、電話がかかってくる。採用関係や取引先との打ち合わせで外出することも多い。

それでも、忙しくて気が立ってたり、声を荒立てたりするところを見たことが無い。
< 13 / 83 >

この作品をシェア

pagetop