ときめきの香りは貴方ですか?
【悪夢の日】
幸せな日々が続いた数日後、永富さんと制作部の打ち合わせがあって、永富さんと優也さんが険しい顔をして話をしていた。

なっちゃんと龍太に聞いてみたら、優也さんが手掛けてる、寄木部長がいる会社のイベント依頼が中断してて、なかなか進まないらしい。

寄木さんは、社長の息子らしく、予算を任されていて、この人がノーと言うと殆どが通らないそうだ。

中断している理由が、その寄木さんのようだ。
「あの人、苦手だ・・・」

お昼過ぎてから、1本の電話がかかり、久木さんが取ってくれた。

「風谷さん、1番に寄木さんて人から電話よ」

えっ?何で私に?

「は、はい・・・お待たせ致しました」
「ご無沙汰しています。私のこと覚えていますか」
「・・・はい」
「少しお話できませんか。詳しくは後で話します。誰にも言わず、あなただけで来てください。ご存じだと思いますが、あなた達へのイベント制作の依頼、私が中断させてます。この話を受けるか受けないかはあなた次第です。待ち合わせ場所は・・・」

「わ、わかりました」
私は震える手で受話器を置いた。

「久木さん、大変申し訳ありませんが、私、急用で帰ります」

ノートパソコンをシャットダウン中で閉じ、鞄を持って直ぐに事務所を出た。
「ちょ、ちょっと!」
久木さんの声が後ろで聞こえる。

凄く怖いけど、あのイベントには思い入れがある。
優也さんにとっても、私にとっても・・・
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