ときめきの香りは貴方ですか?
【恐怖と安堵】
あの時の目を思い出す。
あの目は私を見ていた。

英語のスピーチを見て、うちに依頼してきたと言うことは、私を知っていた。

まさか、私みたいなのを目的にしているはずはない。

でも、誰にも言わずに、2人きりでホテルのレストランで待ち合わせ。

食事するだけで、仕事が通るなら・・・でも、あのねっとりした目つきが怖い。

足取りが重いまま、駅に着いた。
改札に向かおうとした時、携帯が震える。
優也さんからだ。

急に帰ったからびっくりしているかもしれない。
携帯はいつまでも震えっぱなしだった。
通話ボタンを押して、耳を当てる。
何て言おうかな。

「今どこだ!」
優也さん・・・声が出せなかった。

「今どこにいる!」
城崎さんが息を切らしているのが分った。

私は黙っていた。
優也さんの声、決心が揺らぐ。
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