ときめきの香りは貴方ですか?
【人生の分岐点】
桜のつぼみが膨らむ頃、私は城崎愛里になった。

もっと社会人として成長してからと言ったけど、優也さんは早く自分の名字と同じになって、会社でも堂々と自分のものだと証明したいらしい。

結婚式は、私が呼ぶ人、呼ばない人を選べないし、学生時代の友人がいないことを理解してくれて、親族だけの愛情たっぷりな小さな結婚式にしようということになった。

式がまだ始まる前、緊張のあまり私が目をつぶっていると、大好きな香水の香りがした。

今でもあのバスのときめきを思いだし、胸が熱くなる。

どこでもこの香りがすると、どきっとして振り向いてしまう。

「優也さん、ありがとう」
優也さんは、「ん?」といいながら、
「どうしたの?」
「色々思いだしちゃって」
「今からがスタートだよ。もっとどきどきさせるから」
優也さんは妖艶な笑みを浮かべた。

お母さんにベールダウンをしてもらい、お父さんとバージンロード歩く。

こんな日が来るなんて想像もしなかった。

「私達両親が元気な間に、老後のお金貯めなさい。」
まだ20歳そこそこの私に、お母さんは私の将来を心配していた。

「愛里は1人でどこにいっても困らないように、英語を話せるようになりなさい」
お父さんは小さい頃から英語版の教材や本を買ってきてくれたっけ。

何となく言葉を覚えて行くうちに、いつか英語で話しをしたい、漠然とした目標ができたよ。
それでも、英語ができたところで、私の人生・・・なんて思ったこともあった。
でも、お陰で、私は皆のピンチに役に立てたよ。

愛情たっぷりの2人の子供に産まれて良かったとつくづく思う。

お父さんから優也さんに引き渡される私。
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