薄暗い水辺で、私は彼を思う


「先輩、花ちゃんを見捨てたんだね」


「えっ……」


 いきなり何を言い出すかと思ったら、先輩のことで驚いた。


「あの呪いはね、人に移すことで自分が呪縛から解放されるのよ」


「なんでそんなこと、椿が知ってるの……」


 春日は唇の端を吊り上げ、不適な笑みで言い放つ。


「だって、あたしの呪いなんだもん!先輩に向けた復習の怨みなのよ!」


「でも、どうして元カレの先輩を……」


「中学生の時から何年もつき合ってたのに!髪が長い女子が好きだからって、頑張って伸ばしてたのに!一生、好きなのはお前だけって言ってたのに!もう飽きた、で終われると思ってるの!」


 涙を流しながら、春日は私に訴えてくる。

 長い交際期間、色んな思いがあったんだと思う。

 それを「飽きた」と言われて、そうですかって引き下がれない気持ちも痛いほど分かるよ。


 春日の先輩に対する深い思いが、怨みに変わっていったんだ。

 話を聞いて気が付いたけど、先輩に対する怨みが具現化したってことは……

 あの怪異は、春日の生き霊の具現化。


「私が切り落とした長い髪は、先輩への怨みを込めて池に投げ捨てたのよ」



 スマホの画面で見た池が、まさか……




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