✾~クールな天才脳外科医と甘~い極上の結婚を~✾
「いつまでそうしてんだ? ……もう1時間17分経過。いい加減入れよ」


朝陽君は、いつも通り落ち着いた眼差しで問い掛け、高級腕時計を見てから溜め息混じりで見下ろしてきた。

そして目の前のトランクを軽く持ち上げドアを開いた。


「駄目!入れない」


私は、慌てふためきながら朝陽君のトランクを持つ左腕を強く握った。


「……何で?」


「……それより何で朝陽君がここにいるの? 紫音は?」


私は、振り向いた彼に返す言葉が見つからず、焦りながら率直な疑問を口にした。


「いない。説明するから早く上がれ」


「はぁっ!? 何で? ……ちょっと!」


私の疑問を無視してさっさと室内に入る彼の後を慌てて追い掛けた。

混乱状態で部屋に上がると同時に、広々と解放的な全面窓の先に美しくライトアップされたプライベートプールが目に飛び込んで来た。

日中は、その先に輝くエメラルドグリーンの海が望め、海の見えるジャグジー付きだったはず。

憧れの高級ヴィラに足を踏み入れラグジュアリー感に浸るのも束の間、前方から朝陽君がじっと見ているのに気付き一瞬で夢気分を後にした。
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