社会不適合者
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‘ガタンゴトン…ガタンゴトン’

『楽しかったね…!花奏ちゃん…。』

「うん…!プリクラ…?…って、初めて撮った…!凄く楽しかった!絶対にまた行こうね…!………、里桜ちゃん?」

里桜ちゃんは、黙って俯いたまま。

「里桜ちゃん…どうしたの?」

『…っ、………っ。』

里桜ちゃんは、静かに泣いていた。

「えっ?!…里桜ちゃん?…どうしたの?…私、何かしちゃったかな?…ごめんね…。」

『うっ……っ、…っ、違うの…、違うよ、花奏ちゃん…。』

里桜ちゃんはそう言うと、顔を上げてにっこり微笑んだ。が、いつもの笑顔とは違う。私にはそれが作り笑顔だとすぐにわかった。

何か、笑い話に出来ないような、もっと大事な話なのではないかと感じた。

『何でもっ…ないよ……。心配してくれてありがとう…。だから私は大丈…』

「心配だよ!」

里桜ちゃんが全て言い終える前に、私は声に出ていた。“心配”、その言葉に1ミリも嘘はないと、心から言い切れたから。

『花奏…ちゃん……。』

「何でもないって言いながら、なんで里桜ちゃんは悲しそうに泣いてるの…?……何かあったなら、相談して欲しいな………。私じゃ頼れないかもだけど…、“友達”、なんだから…。」

こんなこと言ったのは人生で初めて。
まして友達なんて。

『…ありがとう、花奏ちゃん……。………やっぱ、花奏ちゃんには全部話しておかなきゃだね…。』

そう言って微笑んだ里桜ちゃんの笑顔は、今度は本物の、いつもの笑顔だった。

こうして私達は電車を降り、待ち合わせをした駅のベンチに腰掛けた。

ゆっくりと、綾瀬里桜は涙の理由を語り始める。
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