貴方なんて許せる訳がない
「出産予定日が日曜日で、きょうは家に居てくださいとお願いしたのに、最初のお産は遅れるのが普通なんだろって、朝から貴方は出掛けましたよね?」

「…………」

「その予定日のお昼に陣痛が始まって、五分おきになったから、母に来て貰って病院に行きました」

「出産予定日にも、こんな女と一緒に居たって言うの? どこまで最低な男なの。呆れるわ……」

「…………」

「その夜に柚奈が生まれました。日曜日の夜でした。貴方が病院に来たのは、月曜日の夜。その間ずっとこの人と一緒に居たんですよね?」

「そうだったわね。今日明日辺り生まれるらしいって言ってたわね。瑛あの日……」

「お義父さんとお義母さんは岡山から月曜日の午前中には来てくださったのに……」

「瑠美ちゃんが初めての出産で苦しんでる時も、この女と一緒だったって事? あの時、あんたは病院にも、まだ来ていなかったの? 自分の子供でしょう? 父親の自覚すら無かったの? 世の中にはね、出産に立ち会うご主人だってたくさん居るのよ」

「…………」

「柚奈が生まれてからも、日曜日には出掛けて行きましたよね? 私が産後鬱で辛い時も、何もしてくれませんでしたよね?」

「瑠美ちゃん。ごめんなさい。こんなバカ息子のせいで瑠美ちゃんを苦しめていたのね」

「お義母さんのせいではありませんから」

「瑠美ちゃん……。本当にごめんなさい。何も知らなかったでは済まされないわ」

「ずっと前から変だとは思ってましたけど、怖くて本当の事を知ろうとしなかった私も悪いんです」

「そんなことないわよ。瑠美ちゃんを少しも大切にしなかったバカ息子のせいだから」

「瑠美さん。本当に申し訳ない。瑠美さんを傷付けてばかりのどうしようもないクズだよ。こいつは……」

「…………」

「瑛。お前が瑠美さんにして来た言動、行動、裏切り行為は絶対に許す訳にはいかない。人間として最低だ」

「…………」

「だが、一つだけ……。瑠美さんという優しい娘と柚奈ちゃんという可愛い孫に会わせてくれた事だけには感謝するよ」

「父さん……」

「お前をもう息子だとは思わない。二度と岡山にも帰って来るな」

「…………」


< 11 / 15 >

この作品をシェア

pagetop