ツイてない!!〜But,I'm lucky to have you〜

孝弘の受難

※※※


その電話がかかってきたのは、日本行きの飛行機に乗るために空港に向かっている時だった。

画面に表示された名前に、ドキッとした。


[一条琴羽]


あの人が電話をかけてくるなんて、花音の指示以外あり得ない。何かあったに違いない。
しかも、今、日本は真夜中のはず。つまりこれは、急を要する電話だろう。
一瞬ためらいはあったが仕方なく通話ボタンを押した。


「はい」

『孝弘くん?琴羽です』


あの人の声が僕の名前を呼ぶ。
電話越しに聞こえた声に、胸がキュッと掴まれたような苦しさを覚えた。


「どうしたの、琴羽ちゃん、そっちは真夜中だよね?」

『実は、うちの病院の勤務医が住んでたアパートが火事になって。
花音がその被害にあった医師に、孝弘くんの部屋をとりあえずの寝床として用意するって言い出したの。新しい住まいを見つけるまで、悪いんだけど数日の間、貸してくれる?』

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