ツイてない!!〜But,I'm lucky to have you〜
知らないっていうことは、ある意味、罪だ。
まさか、僕よりずっと近くで『あの人』を見つめ、『あの人』に寄り添う存在がいたなんて。

『あの人』の写真の背景。編集前は喪服をきた多くの参列者が涙にくれる様子が写っていた。その中に一人だけ、『あの人』をじっと見つめる目があったのだ。
そういや、“彼”も医師だ。外科医だ。あぁ、『あの人』をかっさらったライバルのことなど、思い出したくもない。

僕が、弁護士を目指して勉強をしていたころ。『あの人』は永遠に手に入れられない存在になった。ライバルとくっついてしまったのだ。
僕の20年にわたる初恋は、実ることはなかった。『あの人』は、僕の生きる道しるべだったのに。


それ以来、恋なんてしないと思っていた。あの初恋が僕の人生のすべてだったから。
そんな僕を姉ちゃんや腐れ縁の幼馴染たちが心配して、何人か女の子を紹介してくれた。半ば強引に付き合ってもみたけど、やっぱり僕の中の恋愛の容量は空っぽになったまま満たされることはなかった。

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