リリィ・ホワイトの愛が目覚めるまでの日記
 両手には子犬を抱え、おそらく白いフワフワした毛並みのはずのその身体にはまだほとんど地肌しか見えておらず、か細く鳴くその顔を時々覗き込んだり撫でたりと、どうやら犬好きなのは確からしい。
 彼の見た目はうっすら生えた顎髭にボサボサの金髪。 服装は一応それらしい格好ではあるが、どこかヨレヨレでいったい何日着替えていないのかと問いたくなる。

 この人物の邸には執事や使用人はいないのだろうか。

「えっと、君の名前はリリィ……だっけ?」

「できましたら、リリィ嬢と」

 初めて会った人物に軽々しく馴れ合いの声を掛けて欲しくない。
 それがどんなに立派な紳士であったとしても、私をリリィと呼べるのは婚約者のロナウドだけだから。

「リリィ嬢は花嫁修業中なのかい?」

「えぇ、そうです。 本来なら今頃はロナウドの妻になっている予定でしたが、今は少しでも早く追いつかないといけないと思っております」

「それは寝たきりだったから?」

「ロナウドからお聞きになっているかもしれませんが、昏睡状態だったのです」

「そうなのか、それは知らなかった」
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