リリィ・ホワイトの愛が目覚めるまでの日記
愛する人
×月×日

「どちらへ行かれるのですか?」

「邸に帰るのよ」

「あら、何をおっしゃっておいでなのですか?」

「何って、帰らないと皆が心配しているわ」

「でしたら、逆方向でございましょう?」

「え?」

「妃殿下の帰るべき城はあちらです」

 城下から見えるのは森の向こうに聳え立つ白亜の城。

「私の帰るべき場所……?」

「王太子殿下のお妃になられてもう二年経つというのに、頻繁に城下に顔を出されては殿下がまた心配なさいますよ」

「私はリリィよ」

「えぇ、リリィ様ですよね。 もちろん承知しておりますわ。 さぁ、帰りましょう」

 馬と馬車で城下に探しに下りて来た女官と警備兵達。

「さぁ、馬車にお乗り下さい。 殿下がリリィ様を心配するあまり、見張りをつけないとも限りませんよ」

「城下にはとても美味しいパンやハムがあるのよ。 綺麗な花も売っていたし、賑やかなの」

「えぇ、もちろん存じておりますとも。 とにかくすぐに戻りましょう」
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