リリィ・ホワイトの愛が目覚めるまでの日記
 身体が動かない、まるで石にされた銅像のように。
 口も動かない、声も出ない。

 あまりにも突然の、謂れのない死刑宣告をされたような感覚で、血の気が引くのを感じた。

「さぁ、お前達。 そろそろリリィ様がお帰りになる頃だ」

 執事が女中達を持ち場に戻そうとしているらしい。
 玄関ポーチから裏庭にいる彼らの様子は確認できず、どんな表情をしているのかわからない。 それでも不服そうな声から、私の帰宅が気に入らないのだと想像できた。

 私一人が何も知らなかった。
 昏睡状態から目覚めても、本心から喜ぶ人間などいなかったのだ。
 だからあの時、お父様もお母様も戸惑った表情をしていたのだろう。

 そういえば意識が戻る前、誰かの話し声を聞いた気がした。
 あれはロナウドとロージーだったのかもしれない。
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