お見合い婚で一途な愛を ~身代わり妻のはずが、御曹司の溺愛が止まりません!~
「真面目なのね。 翠に聞いたけれど、動物愛護の活動もしてらっしゃるそうじゃない」

「昔から動物が好きで。 将来は獣医になりたいと思ってます」

「あらぁ。ご立派ねぇ」

母は楽しそうに微笑む。
私はというと、冴木の思わぬ発言に驚きを隠せない。

「知らなかった……」

「父さんに、一度は会社で働けって言われてさあ。 言う通りにしたんだし、遅くても三十五歳までには動物病院開くつもり」

「ほぇ……ただの動物好きじゃなかったのね」

「まあな。 尊敬しちゃうだろ?」

「そういうところがなければね」

呆れてため息がでる。
その時、会場の人達がいっせいに拍手をし始めた。
いけない、何も話を聞いてなかった…あとでお父さんにスピーチの感想とか聞かれたらどうしよ。
ふと右隣を仰ぎみると、航太郎さんは真剣な顔付きだ。
途中から、彼は真面目に話を聞いていたのだろう。
内輪話に盛りあがってしまった自分が恥ずかしい。
いくら形だけだとしても、次期社長候補である航太郎さんの妻なのだから、しっかりしなくてはならないのに。


航太郎さんの、本命の女性の存在を知ってからしばらくは、何故か無性に寂しくて、虚しくて、航太郎さんを避けるように生活していた。
けれど航太郎さんは、そんな私にかまうことなく、なんなら威力を強めて接近しては、いつも通りの愛情表現をしようとする。

もう何度、好きだと伝えられたことか。

だけど、そういうのは私だけじゃないんでしょう?
そう思うと、複雑な心境ではあるものの、航太郎さんの真っ直ぐな愛を押しのけられない私はずるい。
確実に、彼に対する思いが変わり始めているのに、気づかずにはいられなかった。

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