運命の推し
私は、目の前のひ孫を見つめる。


嬉しくて。


抱きしめたくなった。




「具合、悪そうだね」

日向はそっと私から離れる。

「それ、渡したかっただけなの。起こしてごめんね」
立ち上がり、背中を向けた日向。


まだ行ってほしくなくて。

「このために来てくれたの?」
と、話しかけた。



「だって」
日向は振り返って私を見た。


「優大の誕生日は、笑子ばあちゃんにとっても特別な日だよ?何かをプレゼントしたかったの」


「じゃあね」と日向は軽く手を振って、私の部屋から出て行く。


静かに障子が閉まって。

日向の足音が遠くなる。






きっと。

自分の部屋から出てくるのに、勇気を出してくれたに違いない。




あの子がこの部屋に来てくれた。


優大。

ありがとう。



あなたのおかげです。



今日、お祝いしてあげられなかったけれど。



心からの感謝を贈ります。













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