逃げて、恋して、捕まえた
ちょっと記憶をたどってみる。


ここは一人旅で訪れたシンガポール。
小倉芽衣(おぐらめい)は普段地味に節約生活をして学生時代から貯めた貯金の半分を費やして傷心旅行に出た。

比較的手ごろなホテルを1週間予約し、近場をブラブラしたりホテルからの景色を楽しんだりののんびりとした旅行。
別に贅沢するための旅でもないし何を食べたいという意欲もなく、昼はほとんどハンバーガーかチキンの日々。正直何のために外国まで来たんだろうと思うけれど、見知らぬ風景と聞こえてくる異国の言葉はそれだけで私の心を軽くしてくれるようだった。

旅行4日目の夜。
せっかくシンガポールまで来たんだから少しは地元を楽しもうと街へ出た。
たまたま入ったのは繁華街から少し抜けたところにある小さなバー。
お勧めのカクテルを作ってもらい2、3杯飲んだところで、片言の日本語が話せるマスターと意気投合した。
もともとお酒が強い方ではないのに何日かぶりに聞く日本語が嬉しくてつい飲み過ぎた。
一時間ほど飲んで気持ちよくなったところで、もうさすがにこれ以上は無理とお店を出た。そこまでの記憶はしっかりある。
ただ、そこからが・・・
< 2 / 192 >

この作品をシェア

pagetop