触れないで、杏里先輩!
「美桜の髪は艶やかで、本当に綺麗だね」

ちょいちょいドキドキする単語を放り込まないで。

「あ、ありがとうございます。でも、杏里先輩の髪もふわふわして柔らかそうで良いですよ」

「ありがと」

背後からクスッと笑った声が聞こえて、擽ったく感じた私は話題を変えようと思った。

「花純先輩、優しい人ですね」

「……そうだね」

杏里先輩の声色が変わった気がしたが、話していないとドキドキしてしまうので、気にせずに会話を続けることにした。

「花純先輩も漫画が好きで話が合います。それに女の子だから凄く安心します。私も二人と同級生になりたかったなぁ」

私の誕生日は四月四日。
あと少し早ければ杏里先輩達と同級生だった。

「美桜がもう少し早く産まれてきてくれれば良かったんだよ。美桜が同級生だったららもっと早く気付けてあげてたしね」

私に気付いてくれて、変わろうと思うきっかけをくれただけで私には充分だ。

「そういえば今日北川君に言われました。オドオドさが減ったって。杏里先輩のお陰です」

「試しに俺に触れてみる?」

「それは無理です!」

「じゃあまた今度ね。はい、完成」
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