触れないで、杏里先輩!
お昼を杏里先輩の二メートル横で食べながら考えていた。

私は杏里先輩にふとした瞬間に触れてしまって気絶してしまうのが怖くて、基本的に距離を取っている。

その距離感に益々絶望していく。


「美桜、昨日から元気が無い気がするけど大丈夫?」

放課後、昇降口で落ち合うと、杏里先輩が私の顔を心配そうに覗き込んだ。

「暑すぎて頭が回ってないだけです。大丈夫です」

笑って誤魔化した。

だって杏里先輩に私の気持ちは言えない。
杏里先輩は初恋の人が忘れられないという話を最後の授業中に思い出したから。

もし杏里先輩に触れられたとしても、私の恋は叶わないんだもん……。
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