ノンセクシャル
 途中、用を足しに行きたくなったので国道沿いのコンビニに寄ることにした。通勤にも使う道なのでたまに立ち寄る事もあるが夜は周りに施設が無いせいで相変わらず店の照明がガラスをすり抜けとても眩しい。
 駐車場ではちょうど白のセダン型上品なベンツがバックで方向を切り替えコンビニを去るとこだった。タイミングが抜群に良かったお陰で入口から一番近い駐車場に止めることが出来た。素早く車から降りて自動ドアを躱すとレジの様子が目に映った、アルバイトが必死にレジを打っている。初めて見る顔だ。その見た目は高校生だとしてもとても幼く童顔だ。その女の子とお世話係と思われるお兄さんがそっと後ろに立ちたどたどしくレジをしている。先頭に並ぶのは男子高校生2人組、その後ろに子供づれの主婦が並んでいる。その後ろは商品棚で見えない。雑誌のエントランスを抜け真っ直ぐトイレに向かう。
 用を済まし終えてドアを開けると成人向け雑誌コーナーに目が行った。ほとんどのコンビニ業界では本部推奨の取り扱いを中止している筈なのでオーナーの独断で取り寄せているのだろう。パチンコ情報雑誌。きわどい水着の女性が表紙をかまえる雑誌。まだエロ本が置いてるのか、普段は気に停めないが最近あまり見掛ける事がないので珍しいと立ち止まった、今では置いている店が全くというほどないので少し安心に似た感情があった。無くなることが寂しいと感じたのだがコンビニで買ったことは1度もない。そもそもエロ本と言われる物を買った事がない。中学の時に高速の脇に捨てられてるのチラチラ見たくらいだ。あの時は好奇心に負け本気で持ち帰るか迷った物だが購入してまで欲しいという気持ちはまるで無い。インターネットの普及でスマホ世代の若い人達の中では当たり前の事で今の時代スマホで少し検索するだけで好きなだけ必要としている画像が出てくるのでわざわざ有料で購入する理由はない。
 オリンピックの開催や色んな理由が複合し時代の煽りで消されたが買わない癖に無くなるのは寂しいと思ったのだ。だがそれは身勝手なことだ。
 ふと隣にある週刊マガジンに目が行き今週の内容が気になったが雑誌越しに見える自分のTOYOTA車黒のハリヤーの助手席に乗る桃子と目が合ったので1話分でも読みたかったが気持ちを抑えて早足でコンビニを出た。
「なんかあったの?」
「今週のマガジンまだ読んでなかったからさ、桃子はトイレ大丈夫?」
「大丈夫」
「そっか、じゃあ行きますか」
 コンビニの店内から漏れる明かりに照らされた長い黒髪の彼女はいつも隣で見ているのにとても美しく感じた。今それを直接伝える事は話の続きとしたら突拍子も無い。それに人の外見を褒めるという慣れていないアクションをする事に強烈な羞恥心もある。私は無言でギアをRにいれ車の方向を切り替えここから15分ほどでつく寿司屋へ向かった。
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