愛しているので離婚してください~御曹司は政略妻への情欲を鎮められない~

 マンションを出てから一週間が経った。

 毎日が楽しくて仕方がない。

 マンションを出たあの日、その足で向かった旅行先は、仙台に一泊してからの北海道の旅。
 一週間目の今日は、のんびりと旅を満喫した帰り道の再びの仙台だ。

「いらっしゃいませ」

 流れている音楽は静かなシャンソン。
 ここは仙台市の駅近く。繁華街の路地裏にあるチョコレート洋菓子店で、イートインできるカウンターがある。

 チョコレートを二粒と、メニューに書かれているおすすめコーヒーを注文した。

「かしこまりました」と、にっこり微笑む髭のマスターは恐らく三十代。鼻が高くやたらと色気がある彼は、もしかしたらフランス人とのハーフなのかもしれない。雰囲気がやわらかく女性にモテそうだ。
 今は私の他に客はいないけれど、この前来た時には客のマダムたちが彼と楽しそうに話をしていた。チョコレートではなく、彼目当ての客もいるのではないだろうか。

 そんなことを考えつつ、ほっと一息ついていると、コーヒーの芳しい香りが漂ってくる。


「お待たせしました。おすすめコーヒーはモカとなっております」

< 20 / 211 >

この作品をシェア

pagetop