愛しているので離婚してください~御曹司は政略妻への情欲を鎮められない~
 二年前とはいえ礼を言わないわけにはいかない。
 氷室仁。接点はなかったが顔も名前も知っている。グループ企業に芸能プロダクションもある常に華やかな男だ。確か歳は俺と同じ。

 早速「氷室さん」と声をかけた。
「はじめまして、五條と言います」

 名刺を差し出す前に、彼はにっこりと笑顔を向けて手を差し出す。

「どうも。お噂はかねがね」
「その節は大変、妹がお世話になりました」

「いえいえ星光さんからくれぐれもと頼まれましたからね、もう全力で対応させて頂きましたよ」

「氷室さんも、青扇なんですか?」

「ええ。俺は彼女の一年先輩になりますが、幼稚園からずっと一緒なのでね」

 やはり俺と同い年だ。

 学年が違っても親しくなるのは想像はつく。幼稚園から一緒なら、先輩後輩でもいつの間にか顔見知りになり話す機会もあるだろう。白樹学園でもそうだった。

 世間話ついでに、思い切って聞いてみた。

「星光はどんな学生でしたか?」

「いい子でしたよ。昔からあのまんまですね」と彼は即答した。
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