【完】鵠ノ夜[上]



「冗談。

……酔ってないって言ってるでしょ」



そう言って缶を呷り、二缶目を空にするレイちゃん。

ペースが早すぎる。というかレイちゃん、それこそ成人して飲めるようになったら絶対酒豪になるでしょ。飲み過ぎなのにへらっとしてるし。



「……逆に酔ったらどうなんの、レイ」



「みんなにはまだ早いから教えてあげない」



「なにそれ……」



「ふふっ……いまねえ、わたし、たのしいの」



ニコニコしているレイちゃん。

だからこそ酔っているのかと思ったけどそういうわけでは無いようで。楽しい、ともう一度声に出したレイちゃんが、ゆきちゃんの肩に頭を乗せる。




「冷たくしちゃってごめんね」



「……お嬢」



「結婚式行った日、色々あってね。

今日みたいにヤケになってて……小豆に余計なことさせた癖に、翌朝もまだ機嫌治ってなくて、最終的にみんなまで巻き込んじゃった」



ごめんなさい、と謝るレイちゃん。

普段気まぐれやその場の雰囲気に流されて怒ったりしないレイちゃんがそうなるってことは、相当参ってたはず。ぼくたちがそれに気づいてあげられなかったのだって問題だ。



「……またいつも通りでいてくれる?」



それにみんなが返す返事なんて、はじめからひとつだけだ。

レイちゃんは嬉しそうに笑って、「じゃあ仲直り記念」なんてナチュラルに三缶目をあけるから、みんなに全力で止められていた。



翌朝。

笑顔で「おはよう」を言ったレイちゃんは、頭痛いって嘆いて「だろうね」という顔をされていたけど。……仲直りできたから、これでよし、かな?



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