【完】鵠ノ夜[上]

◇ すべては女王様の、








──いつもより早く、目が覚めた。

昨日は少しだったけど海で遊んだから疲れているはずなのに、なぜか眠くない。仕方ないから、二度寝は潔く諦める。



「ん、」



日頃布団で寝ているせいで、ベッドって、なんとなく落ち着かない。

身体を起こして隣の雛乃ちゃんを起こさないように静かに洗面所に入り身支度を整えると、着替えて部屋を出た。



「……あれ、」



「……まだ五時過ぎだろ。

休める日ぐらい、ちゃんと寝とけよ」



どうせほかの奴らしばらく起きねーんだから、と言われて「そうね」と笑う。

ソファ前に置かれた荷物。「もう帰るの?」と尋ねながら隣に座ったら、なぜかじっと見つめられた。



……その顔は一体なんなんだ。




「仕事あるから、先に帰る。

お前はあいつらともうちょっと楽しんでこい」



「……エアコン壊れたんじゃなかったの」



「エアコンが壊れても納期は変わんねーよ」



うん、わかってるけど。

後から来てくれたのに先に帰るなんて寂しいし。もうちょっとだけ一緒に、と口をついて出そうになった言葉を、強引に呑み込んだ。



「来年は、憩も来れそうな日程にするから」



「……別に海じゃなくていいから、たまには連絡してこい。

お前が切羽詰まったら、飯ぐらいは付き合ってやる」



「あら、しょっちゅう連絡することになるけど大丈夫?」



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