昼と夜の間で、僕らは手をつなぎ合う


目覚まし時計やスマホのアラーム。

夜眠るとき、わたしはどちらもかけておくことをしない。


ジリリリとベルが鳴らなくても、起きるから。

ピピピピと電子音が鳴らなくても、悪夢がわたしを、強制的にたたき起こすから。


いじめがはじまった中二のときから、わたしは毎夜のように、悪夢ばかりを見続けるようになった。


罵倒される、リアルな夢。化け物に追いかけられる、ホラーな夢。

怖くておそろしくて、夢の中なのに心が削られて。毎朝、逃げるように跳ね起きてしまうんだ。



けれど……文化祭の翌朝。


「温美! あーつーみ!」

「ん……」


わたしはめずらしく、夢にうなされることなく朝を迎えた。

体が揺さぶられる感覚で、眉をひそめて目を開ける。

出勤用の化粧をほどこしたお母さんが、困ったようにわたしを見下ろしていた。


「いい加減起きないと! 今日からまた授業でしょ」

「え……あ……」

「お母さん、もう家出るからね! カギよろしくね」


せわしない言葉を、理解しないままにうなずく。

小走りで出ていったお母さん。ひとりになった空間で、わたしはまだぼんやりした目で、自分の部屋を見回した。
< 66 / 365 >

この作品のキーワード

この作品をシェア

pagetop