視線が絡んで、熱になる【完結】
♢♢♢

「おはようございます」
次の週に出社すると何やら廊下が騒がしい。一瞥して営業部のフロアへ行く。
「だから!見たのよ!不破マネージャーと…!!」

途中、柊の名前を耳にしたが何かあったのだろうか。
気にしないで自分のデスクに行くと既に出社していた奏多と涼が目を輝かせて言う。

「先週不破マネージャーと一緒に帰りました?手繋いでいた二人を見たって人がいて」
「っ…」
「あらら~意外にバレるの早かったな」
「え、涼さん知ってたんですか!」
「智恵さんも知ってましたよね?」
「ええ、バレバレよ。そんなこともわからないようじゃまだまだね」

琴葉抜きで勝手に盛り上がる現場。立ち尽くす琴葉に視線が集中する。
他の部署の人たちからの視線も同様だ。

「えっと…それは、その」

社内恋愛は悪いことではない。しかし突然のことに頭がついていかない。
琴葉が言葉を濁していると柊が出社してきた。
「おはよう。藍沢、これ忘れ物」
「おはようございます。はい…って、え?!」

普段通りに出社した柊が琴葉の脇を通り過ぎる際に、自宅に腕時計を忘れていたようでそれを皆がいる前で平然と手渡す。
「不破、マネージャー…」
顔を引きつらせながら、名前を呼ぶと「なんだ」と不機嫌そうな声が返ってくる。
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