愛しの彼に溺愛~石油王の場合~
私は一歩ずつ父と母に近づいた。
母は私の行動を見て納得したのか「先に席に座ってるわね」と言って、会場に向かった。


「お父さん。そんなに泣いてたら皆の前で歩けないよ?」
「…ぐすん、そ、そうだな」
「そんなに緊張しないでよ。皆っていっても私の数少ない友達と、アキさんのご家族と友達よ。会わせて二十人ちょっとだよ。そんなに気を貼らなくても大丈夫」
「そ、そうか」


優しい父の顔が少しだけ柔らかくなる。


「それじゃあ行こっか」
「あ、う、腕はこれでいいんだよな?」
「もう!練習したでしょ!自信を持ってあってるから!」
「あー!そうだな!自信を持つよ!自信を!」


自分より緊張している人をみると緊張しないっていうけど…。
本当にそうだね。

主役の私より緊張してるじゃん!

少し微笑ましくなって小さく笑ってしまう。
それにつられて父も小さく笑う。

うん。これなら大丈夫そう。

そう思っているとスタッフさんから扉が開く合図が送られてくる。
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