ふたりきりなら、全部、ぜんぶ。
「むぎ!久遠!」
「渚!星見!」
それから急いで学校に向かうと、花柳と水篠の広場にはいつにも増して人がたくさん。
まだ朝早いっていうのに、なにこの人の数!?
「ほんとに!?」
「うそじゃないって!」
「やっばい!!今からめちゃくちゃ楽しみなんだけど!」
「つか考えた人天才かよ。ずっと待ってた!」
なに?なんなの?
きゃああああ!とか、うおー!とか。
あちこちでどっちの生徒も飛び上がりそうなくらい喜んでて、みんなめちゃくちゃ笑顔で明るい表情。
「あそこに、書いてあるらしいよ……」
那咲が指さす先は……掲示板?
「……」
さっきから怖い顔でずっと黙ったままの渚。
「……」
なんとも言えない複雑そうな顔の土方くん。
そして。
「むぎ、落ちついて見て」
真っ青な顔の那咲。
落ちついて?
いったいなんのこと?
とりあえず掲示板になにかあるってこと?
そう思って少し顔を伸ばせば、人だかりの中心にあるのはどうやら掲示板のようで。
なにか貼ってある……?
「すいません、ちょっと通してください」
私と那咲たちを囲むように、土方くんと渚が横を歩いてくれる。
「やっぱり……友達から聞いた話はほんとだったんだ」
「うそ、だろ……」
「……」
那咲、土方くん、渚。
各々がその掲示板に貼ってある紙を見ている横で。
うそ、でしょ……?
「っ、むぎ……!!」
これが夢なのか現実なのか分からなくて、ぐらっとめまいがして、その場にへたり込む。
「むぎ!」
隣で渚が声をかけけてくれてるけど、まったく耳に入ってこなくて。
目の前の無機質な白だけが私をじっと見下ろしている気がした。
「水篠・花柳合同行事、2年、1泊2日キャンプ(フォークダンスあり)」