ふたりきりなら、全部、ぜんぶ。
□彼女、無気力男子とラブハプニング


私はすっかり忘れていた。


キスがうまくなりたいだの、なんだのなんて言ってる間に。


「音です!よろしくお願いします!」

「花岡香澄です!」

「鳳真樹です、よろしくね」

「土方碧です!みんな、よろしくな!」

「森山那咲です」


なんで。


「久遠渚」

「ほ、星見むぎ、です……」


なんで。


「朝日自由です」


なんで。
朝日くんと同じグループなの!?


いよいよ今日はフォークダンス練習初日。

まず最初にドキドキのグループ発表があったんだけど、


「よかったね、むぎ!
久遠といっしょで!」

「う、うん……」


それは本当にもう、めちゃくちゃ嬉しいんだけど……。


「み……朝日といっしょでよかったよ」

「真樹……隠すつもりある?」


鳳くんだけじゃなくて、まさかの朝日くんまで……いっしょになるとか聞いてないよ!


「むぎ、大丈夫か」

「渚……」


その目が心配で、たまらないって言ってる。


渚にはもうぜんぶ、昨日の夜に打ち明けた。

この間自販機であったこと。


『俺に心配かけたくないって気持ちもうれしいけど、それよりもむぎが1人で抱え込むほうが俺にとってはつらいから。体質に関すること、特にこれから水篠に関わることはぜんぶ話して』


『分かった』


『けどまあ、こう、二度もあると……な?』


そのあとのことは……うん。

渚にかくしごと。


そのあとのことはいろんな意味でこわいし、あとあと秘密にされてたって思って、渚が悲しむのはぜったいにいやだから。
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