ふたりきりなら、全部、ぜんぶ。


ぐっは!


「っ〜〜」


「渚?」


やっば、もう声も出ない。

それくらいの破壊力。


あのさ、何回も言ってるけど、なんで家にいるときじゃなくて、外とかこんなときばっかデレてくれんの。


前に甘やかしたいって言ったけど、あのときはめちゃくちゃはずかしがってたじゃん。


焦らしたらこんなふうになんの?

うちのかわいいかわいい彼女は。


遠回しに俺に見境なくどこでも襲っていいよって言ってる?

ほんと、もうぜんぶあげる、なんて、むぎの幻想まで見えてくる始末。


「渚……」


こんな、甘えた声で名前よばれて。


「すき……」


暑さと羞恥で火照った顔で、うるんだ目で下から見上げられたら。


「ごめん、無理」

「え?」

「我慢できない」


ここが学校で、しかも体育館でとか。

そのウィッグも、俺の制服もどうやって手に入れたのとか。


そんなのもう、頭にない。


ただ今目の前の彼女を、むぎを。


食らいつくしたくて、たまらない。
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