ふたりきりなら、全部、ぜんぶ。
【渚side】
「なあ、渚。
このまま那咲のこと、家に持ち帰ろうと思うんだけど、どう思う?」
「奇遇だな。俺も同じこと考えてた」
だって、大好きな彼女が浴衣着て、渚って、ちょっとはずかしそうにしながら自分の名前呼んでくれるんだぞ?
これをかわいいと言わずになんと言う?
「なあ、那咲。
やっぱ今から……」
「家帰るのナシね。
あたし、今日の夏祭り、めちゃくちゃ楽しみにしてたんだから」
「でもそんなきれいなの、他の男に見せたくない」
「あたしはずっと、碧しか見えてないから、他の男なんて眼中にもないわ」
「な、那咲ああああ!!」
「ちょっ、人んちでくっつかないでよ!」
顔を真っ赤にする森山に鼻をグズグズ言わせながら抱きつく碧。
ほんと、男前だな、森山は。
「渚……どう、かな?」
「ん、めちゃくちゃかわいいよ」
「ほ、ほんとに?」
「うん、ほんと、最高にかわいい」
正直、家に閉じ込め……ごほん、なんでもない。
むぎは、俺の言葉に、よかった、なんてホッとしたように笑う。
制服だろうが、パジャマだろうが、浴衣だろうが、むぎがいくらダサくて変わった格好をしていても、だれよりも、この世界中でだれよりもかわいい。
それはもう……。
「正直、今すぐ抱きたいくらい」
「っ、なっ、ば、ばか!
なにいってんの!」
「ほんとなんだけどな」
「もう!それはあとで!早くいくよ!」
「あとでならいいんだ?
じゃあ、今日の夜、帰ってきたらいっぱいしような?」
「し、知らないっ」
真っ赤な顔して部屋を出ていこうとするむぎがかわいくて、にやける顔を抑えられない。
あー……ほんと、かわいい。
俺の彼女、宇宙一かわいい。