ふたりきりなら、全部、ぜんぶ。
耳元で囁く甘い声が、私の理性を簡単に壊していく。
「むぎ」
っ!!
「ず、ずるい……っ」
「ごめん。
けど、ずっとお預け食らってるから、我慢できない。いいかげん、むぎとくっつきたい」
片腕だけだった腰の手は、いつの間にか両腕に。
「逃げない逃げない」
「あぅ……っ」
腰を引こうとしたら、ますますグッと引き寄せられて、またビクッとしてしまう。
「肩に顔、押しつけてていいから。
俺の服、握ってくれてもいいし」
「なに、するの……っ、」
「むぎが俺にふれられることを受け入れられるよに、練習。体質は基本自分で受け入れるしかないものがほとんどだから、ゆっくり慣れていくしかないし、」
───むぎのぜんぶにふれたいって俺の我慢が、いつまで持つかわかんないし。
「っ……」
甘い声に、渚の低めな体温に、ふるりと体が震えたけれど、
「ん、よしよし。
大丈夫だよ。そのまま、」
渚の肩に顔をうめる私の後頭部を優しく優しくなでてくれるから。
胸がぎゅーっとなって、渚にしがみつく。
「もう、我慢しなくてもいいんだもんな」
「っ、えっ……?」
「好きも、かわいいって言うのも、もう遠慮しない。限界なんだよ。むぎを愛でたくて、溺愛したくて、甘やかしたくて」
「っ、なにっ、振り切れてるの……っ」
「んー、元々いつかはバレるか、まあ、話そうと思ってたことだし。観念して、俺の愛受け止めて」
「っ、ううっ……」
「ん、今日はここまでが限界かな。
ちょっと体動かすな」
そう言って、渚の横にゆっくり倒された体がベッドに沈んで。
「一回今日は、このままで寝てみようか。
まずはぎゅーと、手をつなぐとこから。
毎日して、できるようになろうな」
そして最後に。
「おやすみ、むぎ」
話してくれてありがとうな。
大好きだよ。
そう言ってつぶやかれた渚の声がとろりと甘くて、とけそうで。
体の熱さと、渚の愛に、すぐに意識を手放したのだった。