俺の妻は腐女子ですがなんら問題ありません。〜交際0日婚で腐女子の私は甘々に溺愛されてます〜
 速やかに領収書を手に取りグイッと身体を押して距離を空ける。

「はい、確かに受けとりました」

「美桜さん、噂で聞いたんすけど結婚するんすか?」

「あ、うん、そうだよ」

「そっか〜噂って本当だったんすね、人事部の高林さんでしたっけ? 最近よく一緒にいる所見かけますよ」

「そりゃ当たり前よ。毎日一緒に出勤して、一緒に帰ってるんだから。さぁ池澤も戻って仕事しなさい」

 佳穂にシッシッと手払いされ「ちぇ」と何故か名残惜しそうに池澤くんは営業部に帰っていった。そんなに戻るのが嫌だったのだろうか、まぁ確かに営業部は激務だもんな……。暑い中車で色んな歯科医院に回って歯科材を届けて、本当大変な部署だと思う。

「じゃ、定時になったのでお疲れ様でした!」

 デスク周りを片付け、鞄にマイボトルやスマホを仕舞う。佳穂や他の同僚にお疲れ様でしたと挨拶をして少し足速に一階のロビーまで向かうと隆ちゃんはまだ居ない。ロビーの隅で隆ちゃんが降りてくるのを待っていると、距離感の近い昼間の声が「もしかして高林さん待ってるんすか?」と耳元の近くで聞こえる。
 はぁ、と深く溜息をつきグイッと池澤くんの胸を押し返し距離を保つ。

「そうだよ、だから近寄るのはやめてね? 前から言ってるけど池澤くんは人との距離感が近すぎるよ」

「別に。俺は美桜さんだから近づきたいんですよ?」

「はい? って、ちょっと! 何するのっ!」
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