俺の妻は腐女子ですがなんら問題ありません。〜交際0日婚で腐女子の私は甘々に溺愛されてます〜
「親父、このホテルであってんだよな?」

「ん、あぁ、確かにラインでそう言ってたぞ、ほら」

 ん、と親父が見せてきたラインの相手の名前は銀ちゃん。確かにこのホテルで合っている。

「おーい、隆蔵。待たせたな」

 落ち着いていて、低く太い声は隆蔵と親父の名前を呼んでいる。声の方に視線をずらすと五十代らしき背の高くスラっとした黒のスーツを着た男性とその男性より三十センチは低い身長の小柄で可愛らしい雰囲気の女性。ミントグリーンの綺麗なワンピースを着こなして、男性の一歩下がった位置に彼女は立っていた。

「おお、銀ちゃん! こっちこっち」

 どんどん近づいてくる二人に緊張からか胸の動悸が鳴り止まない。
 近くでちゃんの見ると可愛さが更に増す。肩までの長さの綺麗な黒髪は艶めいていて、パッチリと大きい瞳に、小ぶりな鼻。ぷっくりとした唇に、キスしたら柔らかいんだろうなぁ……なんて考えてしまった。

「初めまして、斉藤銀樹(さいとう ぎんじ)です。こちらは娘の美桜(みお)です」

「美桜です。本日はよろしくお願い致します」

 背筋をピンと伸ばし凛と挨拶をする彼女に俺はこの胸の動悸の原因に気づいた。
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