俺の妻は腐女子ですがなんら問題ありません。〜交際0日婚で腐女子の私は甘々に溺愛されてます〜
 ガチャリと鍵の開く音が玄関の方から聞こえた。帰ってきた! と喜びのあまり小走りで隆ちゃんの元へ向かう。

「お帰りなさいっ」

「美桜、起きてたんだ。遅くなってごめんな」

 かなり疲れているのか表情は暗く、声もなんだか元気がない。靴を脱ぎ顎を私の肩に乗せ「はぁ〜」と深く溜息をついた。

「あ〜、癒し。美桜の匂い好き」

 ぎゅう腰に腕を回し、スンスンと私の首筋の匂いを嗅ぐ。息が当たってくすぐったい。私も負けじと隆ちゃんの背中に腕を回し彼の匂いを吸う。

(……煙草の匂い?)

 普段煙草を吸わない隆ちゃんから煙っぽい匂いが服から匂った。なんで? どこに行ってたの? 一つの小さな疑問からどんどん枝分かれして疑問が増えていく。

「隆ちゃん煙草の匂いする……どこ行ってたの?」

 少し身体を離して隆ちゃんの目をジッと見つめる。

「煙草臭いか……今日は実家に呼び出されてこき使われてたんだよ。シャワー浴びてくるから先に寝てて」

「そっか、お義父さんの所に行ってたんだ! なら言ってくれればいいのに〜、私は漫画読んであっという間に時間経っちゃってたから大丈夫だよ! じゃあ先にベットに行ってるね」

(なーんだ! 実家に呼び出されてたのか! 確かにお義父さん一人じゃ色々大変なのかもしれないもんね)

 何で不安に思ったりなんかしたんだろう。モヤモヤとした気分はスッと晴れ、軽い足取りでベットに潜り込んだ。安心したのか急に睡魔が私を襲う。うつらうつら目を開けては閉じるを繰り返した。
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