すべてが始まる夜に
偵察ではなくてデート?
ピピピッ──。ピピピッ──。ピピピッ──。

どこかから、かすかに電子音が聞こえてくる。
目を閉じたまま、何の音だろうと考えながら寝返りを打つと、さっきよりも少し電子音が大きくなった。

あっ、スマホのアラームか……。
もう朝……? 今何時……?

電子音の正体に気づいた私は、鳴り続けるアラームを消そうと、眠い目を擦りながら上半身を起こした。
サイドテーブルに置いた鞄の中で鳴っているスマホを反対の手で探す。そしてスマホを取り出すと、タップしてアラームの音を止めた。ぼんやりとしながらスマホに表示された時刻を見る。

うそ、まだ5時じゃん……。
なんで5時に鳴るの?
あ、そっか。
これって昨日のアラームのままだったんだ……。

昨日、部長との出発時間に遅れないようにと、いつも6時半に鳴るアラームを5時にセットしたまま元に戻すのを忘れていたようだ。

口元を押さえてあくびをしながら、もう少し寝れると思いスマホをベッドの上に置いたところで、私はまだ自分がスーツを着たままだということに気づいた。

うわっ、私、昨日スーツのまま寝ちゃったんだ。
それにお化粧も落としてないし、お風呂にも入ってないし……。

仕方なくベッドから起き上がり、まずはメイクを落とそうとスーツケースからクレンジングと洗顔を取り出し、鏡の前に立った。

「うそっ、何この顔……」

鏡の中には、メイクが取れ、頬はテカり、めちゃくちゃ顔が浮腫んでいる自分が映っていた。

「これってきっと昨日の夜のラーメンが原因だよね。あー、ちゃんとお風呂に入ってお化粧落として寝ればよかった……」

今さら後悔しても遅いけれど、この浮腫をどうにかしなければと、すぐにバスタブにお湯を張りながらクレンジングオイルで丁寧にメイクと汚れを落としていく。そして今度はもこもこの泡でしっかりと洗顔をしていった。

お湯が溜まったところで服を脱いでバスタブに浸かり、身体を温めながらもう一度クレンジングオイルで浮腫みをとるように顔のマッサージを始めた。
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