すべてが始まる夜に
「もう一度聞くが、本当に後悔しないんだな?」

「はい、絶対にしません」

「じゃあ、いくつか約束事を決めることにする」

「約束事、ですか?」

「ああ、まず期間だ。そうだな、3ヶ月……。3ヶ月あればそれなりに自信はつくだろう。1月末までだ」

「わかりました。1月末までですね。えっと、毎日ですか?」

「まっ、毎日? しゅっ、週末、週末の土日だ」

「土日ですね。それと、場所はどこになりますか?」

「場所は……ここでいい。この部屋で……」

部長はおでこに手を当てたまま、目を瞑って首を振り、大きな溜息を吐いている。

「わかりました。じゃあ、レッスンの日は携帯にショートメールで時間を入れてもらってもいいですか? そしたらここにお伺いしますので」

「ああ、わかった」

「それと……」

「ま、まだ、何かあるのか?」

「今日って土曜日ですよね? 今日からレッスンを始めていただてもいいでしょうか?」

部長が放心したような顔で私を見つめたまま、また固まってしまった。
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