すべてが始まる夜に
2回目のレッスン
会議が終わってから、若菜ちゃんも吉村くんも自分の仕事の傍ら、色々なアイデアを考えてくれているようだった。私も全国の人気カフェのホームページや、雑誌、SNSなどを見てそれらを参考にしながら、ラルジュオリジナルとして何かいいアイデアはないかと考え続けていた。

そして金曜日になり、時刻も15時を回って定時まであと2時間半と思っていたところに、部長からショートメッセージが届いた。

『今から会議なので7時には帰れると思う。7時半に来てもらってもいいか?』

ドクン──と胸の奥で大きな音がした。
文字を目にしただけなのに、腰のあたりがまた変な感覚に陥ってくる。私は「わかりました。7時半にお伺いします」とだけ返信すると、スマホを自分の目から遠ざけるように鞄の中にしまった。


定時で仕事を終えて家に戻ってくると、時刻はまだ6時10分を過ぎたくらいだった。
約束の7時半までまだあと1時間以上時間がある。
私は、先日部長にいろんなところに触れられ、キスされたことを思い出し、先にシャワーを浴びておこうと浴室に向かった。

こんなことをしていると自分が準備万端で待っているようで恥ずかしいけれど、一日中仕事をして汗をかいた身体に触られることを考えるとシャワーは絶対に浴びておきたい。
いつもよりも念入りに身体と髪の毛を洗い、浴室を出てから髪の毛を乾かしてメイクを終えると、時刻は7時前になっていた。

緊張からかお腹は空いていないけれど、何かお腹に入れておこうとお湯を沸かしてカップスープを作る。
約束の時間まであと10分となったところで、突然スマホが震え出した。

「えっ? 部長から電話?」

画面をを見ると、松永部長と表示されている。
私はひとつ息を吐くと、通話ボタンをタップした。
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