すべてが始まる夜に
悠樹side #4
「さすがにこれだけ抱くと相当疲れたはずだよな」

隣で身動きもせず熟睡している茉里の寝顔を見ながら、俺は自然と笑みが零れていた。
こいつの顔を見ているだけで幸せだと感じる自分がいて、もう愛しくて堪らない。

昨日熱海で茉里を抱き、朝も2回もしたというのにどうしても我慢ができず、明日は会社だというのにまた茉里を抱いてしまった。自分でも正直、こんなに性欲が強かったのかと驚いてはいるけれど、茉里と一緒にいるとつい反応が見たくてどうしても触れてしまい、我慢ができなくなってしまうのだ。

「明日仕事なのにごめんな」

深い夢の中へ入りこんでいる茉里にそっと呟く。
それにしても、俺がこの数ヶ月で結婚したいと考えるようになるとは夢にも思ってもいなかった。
今まで頑なに自分が家族を養えると思えるようになるまでは結婚はしないと決めていたのに、そんなことよりも、こいつと一緒にいたいから結婚したいと思う俺がいた。

「お前と本当に付き合えるとは思ってなかったよ。俺のこと好きになってくれるまで、まだまだ時間がかかると思っていたからな」

毎回俺の予想をはるかに超えた発言に驚かされ、本人は真面目な性格ゆえに、そこにはあざとさも計算高さもなく至って真剣で、気がついたら俺の方が夢中になっていた。

それに加えて茉里に触れれば触れるほど俺の独占欲は強くなる一方で、ますます好きになるばかりだった。
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