すべてが始まる夜に
「私だって悠くんと離れるの寂しいよ。たった2日でも、悠くんが隣にいないんだと思ったらすごく寂しいもん。だけど、このラルジュのオープンだけはどうしても成功させたいし、土曜日には悠くんと2人で一緒にお祝いできるから、それを楽しみに頑張る」

そう言って今度は手を握り返すと、「土曜は泊まりだからな」という返事が帰ってきた。

「泊まり? どこかに泊まるの?」

「ああ、お祝いをしてそのまま都内のホテルに泊まる予定だ。その方がゆっくりお祝いできるだろ? 熱海以来旅行にも行ってないしな」

その言葉を聞いて、自然と顔が綻んでしまう。

「うわぁ、うれしいな。わくわくしちゃう……」

「そんなにうれしいか?」

「うん。悠くんと一緒ならどこでもうれしいけど、熱海の旅行がすごく楽しかったから、また悠くんとあんな旅行みたいなことができると思うとすごくうれしい」

すると部長は再び、ぎゅうっと手を握ってきた。

「どうしたの、悠くん?」

「どうしたのじゃねぇよ。こんな電車の中でそんなこと言いやがって……。俺はこれから福岡に行くんだぞ」

「うん、知ってるよ」

「知ってるよじゃないだろ……くそっ。ああー、こんな状態で2日も触れないとは……」

嬉しいかと聞かれたから、素直に嬉しいと答えたのに、嬉しいと答えてはいけなかったのだろうか。
部長がどうしてそんな風に言っているのかわからず、私は自分の気持ちを伝えるように、両手を重ねるように部長の手を握り返した。
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