暴君王子の恋の瞳に、私は映らない



「あらやだ!
 しゃがんでたら、全身が見えないじゃない」



にんまり笑顔で

私の腕を、強引に引っ張り上げ



「やっぱり私の見立て通りね。
 つぐみちゃんに似合いすぎ~」



粘っこい声を弾ませ、私に抱き着いてきた



ちょっと意地悪な言い方をすると



今日初めて会った人とは思えないほど

馴れ馴れしいこの方は……



もちろん

この部屋の主の、暴君王子様ではなく……




腰まで伸びた艶髪を、キラキラとなびかせる



美人秘書系で


男を誘惑するフェロモンを発している


この世の物とは思えないほどの、絶世の美女。




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