ぽっちゃりナースですが、天才外科医に新妻指名いただきました

 騒ぎを聞きつけた師長が現れると、看護師たちは逃げるように散った。

「高場さん、ありがとう。私を守ってくれて」

 ナースステーションの片隅で、谷口さんにそっと声をかけられた。

「谷口さん。むしろ巻き込んでごめんなさい」

「ううん。高場さんかっこよかった。いつでも連絡してね。私、高場さんを応援するから」

 谷口さんは名刺にメッセージアプリのIDを書いて、差し出す。

「わあ、ありがとう」

 これで、栄養面のサポートはバッチリだ。

「あなた、いつの間にそんなに強くなったの」

 見ていた師長が、あきれたように言った。

 今までは、自分に自信がなかったから、心無い言葉にも反発せず、なんとか笑いに変えようとしていた。

 でも今は違う。こんな私でも、好きだと言ってくれる人がいる。

 私が強くなったというのなら、それはきっと。

「恋をしてるんです」

 恋は女性をきれいにするという。でも、きっとそれだけじゃない。

 この恋は、私を強くしてくれる。

 ニッと笑った私に、師長は「それは素敵だけど、仕事中の私語はほどほどにね」と言って微笑み、師長室に戻っていった。
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